2024年3月12日
ロート製薬 生産事業本部 大阪工場 充填包装グループ 2チーム リーダー 小口 香 様にインタビューをしました。
生産事業本部 大阪工場 充填包装グループ 2チーム
リーダー 小口 香 様
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
本日はロート製薬株式会社生産事業本部大阪工場チームリーダーの小口香さんにお話をうかがいます。
女性のお立場でCPF資格に取り組まれ、見事合格されました。
本日はお目にかかれることをとても楽しみにしておりました。
まず小口様の現在のお立場と職場での役割からお聞かせください。
小口
大阪工場で主に充填包装グループのリーダーをしています。
担当しているのは2チームで、それぞれユニットリーダーが配置されています。
主に診断薬を製造する工程と化粧品を充填する工程を担当しており、そこで生産管理を受け持っています。
ユニットやチームというお話が出ましたが、小口さんが実際にみられているのはだいたい何人ぐらいですか。
小口
直接はユニットリーダーの2人ですが、その下にそれぞれ25人ほどいます。
ですから2チーム合計で50人くらいになります。評価の対象者となるのもその50人です
50人のまとめ役というわけですね。
日々の仕事の中でご自身がもっとこうしたらいいのにと感じる課題は、どのようなことでしょうか。
小口
工場はものづくりの場所ですが、ものづくりは人づくりといえるほど、ものを生産しているのは人なのです。だから、私は人づくりという部分にすごく重きを置いています。
私は工場の人材育成も担当しています。私の直属の部下は男性ですが、工場の9割を女性が占めています。
人を育てるとなると、やはり大事になるのはコミュニケーションです。適材適所も重要な部分だと思います。特にこの工場で扱っている診断薬というのは、ISO査察などもあり、作業員に厳しいことを求めることが多くなります。それぞれの適性を判断し、スキルアップを要求する必要があるのです。
そこで、ラインの作業員をレベル分けし、それぞれの段階に応じて育成をしています。
その点が、自身で強く意識している部分です。
話しを伺っていまして、状況に応じて視点を上下させ、俯瞰的に現状を把握しながら、改善に取り組んでいるように感じました。
小口さんはそもそも、何をきっかけにCPF資格を知り、初めて名前を聞いたときにどんな風に思われましたか。
小口
数年前のちょうどCPF資格ができたころに、先輩が受験しました。
確か2011年か、2012年だったと思います。
そのときに人材開発部門から「こういう試験があるよ」と教えてもらいました。
そのころは現在の立場とは違っていましたので、率直に申しあげてこんな難しい試験が、自分に回ってきたらどうしようと感じていました。それから数年が経ち、合格者がなかなか出ない状況が続いていました。みんな結構勉強していたのに、挫折していたのです。
そんなとき、当時のマネージャーから実務や人材育成に必要だから、工場でもこの試験を採用したいという話がありました。このときの私は試験内容に興味があり、これを理解しておかないといけないとも感じていました。そこで、私が先頭を切って試験を受けようと思ったのです。
存在を知ってから実際に受験に取り組むまで時間がありますね。自分自身の気持ちが熟し、いいタイミングが訪れたということでしょうか。
小口
試験のことを知った当時はユニットリーダーでしたから、今と少し立場が違います。
その際は受験の意欲はありませんでした。それで受験しなかったのでしょう。
実際に受験の準備に取り掛かったとき、これは難しいとか大変だと思ったことはありましたか。
小口
ありました。
まず、ボリュームです。テキストが3冊セットで、見た瞬間にすごい量だと感じました。
私は正月休みに足りない部分を勉強しようと年末の12月28日にテキストを送ってもらい、1月に試験を受けました。試験まで1カ月なかったわけです。
今考えたら無謀なことをしたと思いますが、その当時は日常の中でちゃんと実力を確認しようと考え、そのように決めたのです。でも、最初は範囲が広いのに驚き、消去法で勉強を進めていきました。
日々の業務で原価管理をしていますし、工場で細かく指導を受けたところもあります。
点と点がつながって何とか理解できたところは軽くスルーし、苦手な分野を徹底的に頭に入れていきました。でも、年齢的に、新しいことを覚えていくのは難しかったです。
テキストが手元に届いてから、冬休みを利用して集中して取り組んだわけですね。
小口
そうなります。テキスト自体は通して5回、読み込みました。
でも、1冊読み終わるのにも結構な時間がかかります。取りあえず5回はすべて読み込もうと思い、正月休みが終わって仕事が始まってからは、移動や合間時間を見計らって読み込んでいきました。
大事なところに線を引いてスマートフォンで写真に撮り、見直しができる文房具(注:学習応援キャンペーンでプレゼントしたぺんてる社のアンキスナップ)もいただいたのですが、その時は不思議と使いませんでした。
あの文房具は暗記したい箇所をマーキングして、ページごと写真に撮ると、その部分が隠れていて、タップすると答えが見える仕組みになっています。
小口 今、思い出すとすごく良いものだったので、これから受験する若い子たちに勧めています。
合格者のみなさんに学習時間をアンケート調査しています。試験期によっても変わりますが、合格率が高いのがだいたい50時間から60時間です。期間でいいますと、半年ぐらい前から毎朝30分など少しずつ進める人もいますし、直前に集中して多くの時間を割く人もいます。どちらかといえば、小口さんは後者でしょうか。
受験勉強中や合格後も日常の業務は変わりなく続いていたと思いますが、何か気づきがあれば教えてください。
小口
最も参考になったのは、変化に対応できる工程管理の進め方という部分です。業務のチェックを前日の夕方、当日の朝、当日の昼に行うことです。私は普段、工場におらず、ちょっと離れたオフィスで仕事をしています。ですから、何かのトラブルがあったら、工場へ入って指示するわけですが、どういうふうに確認すればいいのか、言葉1つでどうアラートをだせばいいのか、参考にさせてもらいました。
職場巡回と即時のアクションが大切と書かれていましたが、そこは不足していたと感じています。それまでは朝礼とそのあとに1回ぐらいしか状況説明を受けていませんでした。
具体的にいうと、朝に状況を聞き、問題があればすぐに対応させ、午後もできるだけ現場に顔を出すようにして夕礼みたいな感じで話を聞く程度だったわけです。
テキストには必要な巡回回数や計画したことを確認する方法が具体的に書かれています。そこで、離れた場所にいても問題なく管理できるよう15分程度の昼礼を入れたほか、夕礼も加えるなどやり方を変えました。行動としてやっておきたいことは、テキストをコピーして置いてあります。それで実際にやったら、チェックしているのです。
業務テキストのような感じで今も利用しているのですね。
小口
そうなのです。
後継者を育てるときの項目に勉強してもらうことを入れようと思いました。
ユニットリーダーをしている人が次のチームリーダーになるとき、CPFを受験するようにしたいのです。そうすればいろんなことが身につき、理想的な管理ができるのではないでしょうか。そのことはすでにマネージャーに相談しました。
マネージャーは何とおっしゃいましたか。
小口 そういうプログラムを作ったら、同じような管理をできるリーダーができ、良い教材もあるので、やるべきだといわれました。
着々と根回しし、組織として導入していただいている点は、私たちにとってもうれしいところです。
後に続く方がテキストを手に取り、分厚さに少し弱気になるかもしれません。
そんなときは何とおっしゃいますか。
小口
まさに「やるのは今です」という感じになるでしょうか。
次の受験はあなた、その次はあなたと順番を決めました。現在の管理職はみんな受けてもらおうとしているのです。
次回受験する人は女性で、家庭を持っています。家に帰ったら学習時間を全く取れません。
このため、テキストを見た途端、「無理やわ」という言葉が出ました。これに対し、私は「全部が無理ではないでしょう」といい、できる部分を削除して勉強する方法を教えました。
それで試しに試験にトライしてもらうと、得意なところは最初から100%の正解率だったらしく、弱点のところは正解率が30%程度でした。
「弱い部分が足りていないだけだから、そこを勉強するとしたら、テキストの中の数ページで終わる。そこの正解率を60~70%に上げると、絶対に受かるよ」と説得したのです。
最初はこんなにたくさんの量を覚えられないと感じていたそうですが、そう説得した結果、その人は「ほんまに気が楽になった」といっていました。誰もが最初はちょっと難しいと思うようです。
小口さんも当事者だったことから、そういったネガティブな反応をきちっと受け止め、自分自身の経験も踏まえてアドバイスしたことがとても効果があったように見えます。
結局、こういう資格試験は個人の取り組み次第で合否が分かれます。
中にはガイドブックを買うところまで会社で面倒を見るものの、あとはご自身でというケースもありますが、その場合は個々の受験者のモチベーションがなかなか上がらないものです。受験対象者に対する最後までのケアの有無で合格率に差が生まれているようです。
不合格だった場合も、その後受験しっぱなしにしていたら、それまでにかけた時間とお金が無駄になってしまいます。ましてどの受験者も忙しい業務の中で受験勉強をしています。
今の小口様のお話は、さすがにリーダーとしての役割を十分に果たしていると感じました。
小口
マネージャーの後押しもあったおかげです。最初に資格が生まれた当時に受けた人が2人いました。テキストはもちろん、会社が買ってくれました。
2人がすぐに受験しなかったものですから、「あれはどうなった」と催促されて半ば強制的な感じで受験勉強していたのです。何年か時間が空いて同じく次の人が学習し、受験するようになりました。おっしゃる通り、その後のフォローや仕掛けは必要だったと思います。
CPFの資格合格者は大阪工場に私を含めて2人しかいません。上野工場にも合格者はいるのですが、うちの会社では人材育成ボードに資格を取得した人の名前を記録し、資格一覧を見える化しています。
そういうことを続けていけば、モチベーションが上がるのではないかと考えています。
お話をうかがっていて最初のきっかけから現在、そして後進につなぐまで社内で良い循環ができているように感じました。
ところで現場でOJT中心に育ってきた人たちは、このような資格制度にためらいがちになることが多いようです。しかも、これだけテキストのボリュームがあると、尻込みする人がいるかもしれません。そんな方たちの背中を押すような応援メッセージをいただけますか。
小口 最初はネガティブに受け取ってしまうかもしれませんが、管理の仕事をしていくうえで絶対に武器になる資格です。自分の武器を取りに行くような感じで学習してスキルを身につけ、後輩たちに伝えていってほしいですね。
最後に小口さんが思うところやこういうふうになりたいと考えていることがあれば、教えていただけますか。
小口
武器や知識を持たないリーダーは、メンバーを育てることができず、それ以上の人間にもなれません。まずリーダー自身が武器や知識を身につけることが大切です。
会社の中でも自分の時間とお金を使い、自己研鑽することを勧めています。これからも勉強が大変ですが、自分の武器を増やせるよういろいろとチャレンジしていきたいと考えています。
本日はどうもありがとうございました。