2024年3月12日
東京電力ホールディングス 経営企画ユニット グループ事業管理室 調達管理グループ 能力開発担当課長 谷口 正洋様にインタビューをしました。
経営企画ユニット グループ事業管理室 調達管理グループ 能力開発担当課長 谷口 正洋 様
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
本日はCPFを取得されました東京電力ホールディングスの谷口さんにインタビューさせていただきます。
どうぞよろしくお願いします。
谷口 よろしくお願いします。
まずは順番に質問させていただきますが、現在携わっているお仕事から教えてください。
谷口
私は現在、東京電力ホールディングスで傘下にあるカンパニーを含めて250人ぐらいいる調達部門の社員の人材育成と研修を担当しています。
東京電力グループには、ホールディングスのほかに、火力発電をするフュエル&パワー、送電や変電、配電を受け持つパワーグリッド、市販品を調達するビジネスソリューション、福島第一原子力発電所の廃炉を担当するカンパニーなどがあります。
それぞれのカンパニーの本社に調達センターが存在しているのです。
このグループの調達業務は主に火力や原子力の発電設備、送配電や変電の設備、お客さんに電気を届ける設備、メンテナンスの工事契約、設計の委託などです。
その中身はプラントから変圧器、電柱まで非常に幅広くなっています。
建物の建設工事や設備の基礎になる土木工事を発注するのも調達の仕事です。
こういう人たち向けの研修を企画し、実施するのが私の仕事になります。
目に見えるものから見えないものまで非常に調達範囲が広いですね。
谷口
そうですね。
小さいものだと手のひらに乗る程度から大きいものならプラントまで本当にかなり幅が広くなっています。
CPFの話の前に、組織的に導入されたCPPについて触れさせていただきます。
谷口さんは調達組織の中で教育担当をなさっているわけですが、日本能率協会の資格制度のCPPを組織的に導入いただいております。
導入するきっかけはどこにありましたか。
その経緯について少し教えていただきたいと思います。
谷口
調達を業務レベルで最低限のところからいいますと、手配購買から始まります。
取引先にこういったものを頼むという手配をかけるものです。
コストダウンを進めることになれば、取引先同士で競争してもらい、その競争の中で値段を下げてもらう競争購買へレベルアップします。
私どもは今、競争購買レベルのステージにいて、競争率が60%ぐらいでしょうか。
ただ、調達品の中には競争できる分野とそうでない分野が存在します。
そこで、次の段階に進んで戦略的な購買レベルに入っていかなければならないと考えているのです。
しかし、職員全体で見ると、そこまでの知識レベルに達していないことを自覚しています。
それで、メーカーさんなど先に進んでいる企業のノウハウをどんどん吸収してそのレベルにのぼっていこうと計画しました。
職員の一部は既にそのレベルに達していますが、全体のレベルを上げるためには何か教科書のようなものが必要になってきます。
そこで見つけてきたのが日本能率協会のCPPという調達プロフェッショナルの検定でした。
組織全体を底上げするのにもってこいだと考えたわけです。
私どもも以前から社内でテキストを作って研修を進めてきました。
しかし、社外に通用するものにしないといけませんし、時代の流れに合わせた変化にも対応する必要があります。
日本能率協会なら時代が変わればテキストを改訂していただけると聞きました。
それで、CPPという検定を使うようになり、これまでの3年間で250人がひと通り受験し終わった状態です。
研修の事務局としてはCPPの基礎の上にいろいろな戦略に基づいて知識を高め、コストダウンを進めていきたいと考えています。
CPPの導入を通じ、調達に関する基礎的な考え方、スキルを学ぼうということですね。
谷口
そうです、そういう形になります。
CPPを勉強したうえで不足している知識を、さらに積み上げようと考えています。CPFもその候補の一つです。
今回、CPFを受験しようとお考えになったのも業務上の課題があったからだと思いますが、その課題の部分をもう少し詳しくお話しいただけますか。
谷口
私どもはCPPで基礎的なところを学んでいます。
自分たちのステージは、競争購買で取引先に競っていただく中でコストを下げるとともに、新しい取引先を開拓することがどうにかこなせている段階です。
でも、取引先に競争していただくだけではコストダウンに限界があるのも事実です。
技術革新がどんどん進んでいるところはコストダウンの余地が広がりますが、そうでない分野も少なくありません。
そういう分野に対しては、取引先といっしょになっていろいろなことを考えていかなければならないのです。
取引先の工場へ出向き、お互いに知恵を絞ってコストダウンを検討しようと呼びかけ、同意してくれたところとコストダウンのためのワークショップみたいなことをしています。
こちらはバイヤーの側ですから、コストダウンするところが優先順位の1位です。
しかし、相手の工場からするとやるべきことがいろいろとあり、私どものお願いが必ずしも優先順位の1位に来るとは限りません。
そもそも取引先からしたら、発注元の担当者が来ること自体快く思っていないところもあるでしょう。
せっかく自分たちが付加価値をつけた商品を安く買いたたかれると感じる気持ちもあるはずです。
そういう中で、工場の人たちとスムーズにコストダウンを進める方法はないかと考えていました。
それを実現させるためには、工場でどんな仕事をしているのかをもっとよく知る必要があります。
そうしなければ相手の土俵に入っていけないのです。
そこで、実際の工場を知るためのテキストや検定をインターネットで探していたときに、CPFの第一線監督者マネジメントガイドを見つけました。
テキストの項目はネット上に公開されていましたので、それを見ていくと作業管理や工程管理、品質管理、安全管理、環境管理など工場が気をつけなければならない点がうっすらと浮かび上がってきました。
勉強していくうちに、工場がどんな悩みを持っているかが分かってきました。
私どものお願いをスムーズに受け入れてもらえない背景にある工場の苦労が、少しずつ理解できたように思います。
工場の苦労をしっかりと理解したうえで、お願いしていけば、プロジェクトの進み具合も変わるのではないかと考え、取りあえず工場の仕事の進め方を丸のみするために勉強を始めたのがCPFです。
工場を知るきっかけとでもいうべきでしょうか。
特に私は研修や育成を担当し、研修で工場を訪問するときの引率者の役目を持っていますから、工場のことをよく知っておく必要もありました。
CPPのテキストには、バイヤーは可能な限り現場へ足を運ぶよう書いてあります。
私どもでは昨年、購買調達にかかわるバイヤーを対象に実際にサプライヤーのところへ足を運んでいるかどうかを問う実態調査を行いました。
200人ぐらいが回答を寄せてくれましたが、実際に定期的に足を運んでいる人は3割ほどしかいませんでした。
谷口 意外と少ないですね。
みなさんとも忙しい余り、大事なところが抜け落ちてしまっているという印象を受けました。
だから、谷口さんの先ほどのお話を聞いていて、大事なところをきちんと対処しようとする気持ちが伝わってきました。
谷口
一時期、コストダウン競争をどんどん進めていた時には、以前から取引がある工場と関係が良くなりすぎると、新たな競争相手を連れてきにくくなる、という、考えが広がりました。
それで、日本のメーカーの多くがサプライヤーの工場へ行かなくなったという話を思い出しました。
そのころはバイヤーとサプライヤーが密に行き来して共同で状況を改善するより、どんどん新しいところへ外注して競争させた方が、コストが下がると考えられていました。
そういうドラスティックなことをやった悪影響が残っているのかもしれません。
バイヤーはものの作り方や何がキーコンポーネンツになるかが分からないと、どこで値段を下げるべきか見当がつきません。
だから、現場へ足を運ぶのはすごく大事だと考えています。
ものづくり業界では、バイヤーが最も外の人と接する機会が多いはずです。
その中で工場訪問があっても当然だと思います。
訪問した際にどう共同改善していくかをCPFを通じて学んでいきたいわけですね。
谷口
そうですね。
訪問するバイヤーはどうしてもコストダウンや納期の短縮に目が行きがちですが、そこら辺で工場に協力してもらうためには工場の事情を理解し、同時にいろいろな点で工場の課題を解決できることを示すことが必要になります。
そういった点の大事さを分からせてくれたのもCPFでした。
先ほどネットで情報をお探しになったというお話がありました。
第一線監督者という言葉はそれほどなじみがなかったと思いますが、どういうキーワードでこの資格までたどり着いたのでしょうか。
谷口
私が行く場所が工場でしたから、キーワードは工場の管理、工場長の知識、生産現場などです。
ほかに生産、工程、工場、工場長とかいう言葉を交えて検索したところ、たどり着くことができました。
確かに、第一線監督者という言葉は全然知らなくて、その言葉で検索することはありませんでした。
工場周りの知識というキーワードを工夫して検索した結果、CPFを見つけたのです。
生産現場とかいう言葉は検索に入れたと思います。
英語のフォアマンという言葉は結構、しっくりきますが、第一線監督者はキーワードとして想定するのが難しいでしょう。
資格のタイトルとして考えたとき、第一線監督者はどうしてもピンときません。
プロダクションフォアマンならまだましかもしれませんが、資格のタイトルは考えた方が良さそうです。
第一線はフォアマンの直訳でしょう。
工場経営者や現場経営者などもっとうまい言葉が必要になると思います。
いろいろとネットで調べていただいたあとでテキストを購入してもらったようですが、開いてみた印象はどうでしたか。
谷口
テキストの項目がネット上に上がっていましたから、作業管理から工程管理、品質管理、生産性向上、安全管理、環境管理と、工場の管理者がやるべきことがひと通り網羅されていることは事前に分かっていました。
実際に購入してみると、図表が多くて分かりやすく、これなら工場の仕事をひと通り頭に入れることができると感じました。
これぐらいコンパクトにまとまっているテキストはいろいろ検索してみましたが、やはりありませんでした。
市販の本に工場経営のことを書いたものがありましたが、これほど広範囲ではなく、話も古かったです。
最近、工場についてしっかりとまとめた本はあまり見かけません。
IoTとかは多いですよね。
谷口
そうですね。
そっちの新しい方にみんなが流れてしまい、ベーシックなものが見当たらないのです。
だから「CPFの教科書を見て、これはいい」と感じました。
あと、後ろの方の第2部に研修や訓練のことを書いています。
これを読んで、工場の管理者がやらなければならない全体像を網羅していると思い、このテキストで学んで受験しようと決めました。
実際に受験しようと思い、テキストを購入したあと、どういうふうに勉強に取り組みましたか。
谷口
このテキストに沿って勉強していきましたが、範囲がかなり広いのです。
私の場合は工場にいたことがありませんから、工場の仕事の全体像を体験していません。
テスト対策として重要な部分や暗記すべきところはよく分かりませんでした。
それでもっと調べを進めていくと、セミナーがあることが分かりました。
それは試験対策セミナーですね。
谷口 そうです、それでセミナーを受講することに決めました。
セミナーに参加するまではご自身で勉強していたのでしょうか。
谷口
そうです。
最初は図表が大事だろうと考え、コピーをノートの左側に張り付け、勉強していました。
しかし、自己流で進めていただけに、これでは身につかないかもしれないと感じていました。
工場のことを知ることが最も大事ですが、せっかく受験するのだから、合格したいとも考えていました。
本音の部分では、実際に工場へ行ったときにこのテキストを見せて試験を受けたことを伝えると、こいつは勉強して工場の改善にいっしょに努力しようとしている、と受け止めてくれるのではないかと期待していたのです。
こけおどしみたいになりますが、工場の方たちに真剣さをアピールしたかった部分も大きかったわけです。
勉強している間に工場へ出かける機会があり、勉強した内容を実際に確かめながら進める形になったというわけですね。
谷口
そうです。
実際に研修生を工場へ連れていくことがありましたので、その際に独学でかじった部分を工場の人たちに話して、反応を確認していました。
工場へ見学に行くと、最初は大体、工場の人が2、3人横について説明してくれます。
CPFで学んだことを質問すると、結構反応がいいわけです。
共通言語と共通認識が増えていったのですね。
谷口
確かに増えました。
そういう部分が大事ですよね。
ちょっと試しながら始めてみたところ、言葉が同じで相手の言葉もある程度想定して話を続けられます。
だから、話が途切れることがないのです。
やはり、仕事のことを十分に知らないと「ああ、そうですか」で終わってしまいますが、ある程度の知識があると話がどんどん展開し、コミュニケーションがスムーズになりました。
そこで感じたのは、もっと勉強すべきだということです。
しかし、独学だとどうしても付け焼刃になってしまいます。
それで、セミナーに通って先生から大事な点を教えてもらいたいなあという思いが強くなりました。
セミナーで丸1日勉強するのは確かに疲れますが、1日なら休みも取れるし、通えると思いました。
CPPは社内共通認識や理解、CPFはサプライヤーとの共通認識で活用しているということですが、社内からサプライヤーまで知識と言語でつながっていることがすごく伝わってきます。
それぞれの資格や資格取得のための勉強が、認識や知識をつないでいるようにも感じました。
谷口
そこまで最初から考えていたわけではありません。
でも、調達の仕事を進めていくと、競争だけでは原価が下がらない分野があるのです。
これを共同で改善していかなければならないというのが、課題認識だったのです。
今、ご指摘くださったようにすべてが地続きであることは事実です。
しかも、社内だけでなく、工場の方とも協力していかないといけないわけですから、まずCPPで社内に共通言語を作り、ベースを固める必要が出てきます。
そして、社外へ出て行ったときには、外の言葉でコミュニケーションを取らないと相手に伝わりません。
そのためにCPPと少し異なるCPFを試してみたわけです。
やはり、業界には業界の用語で話していかないと、深く入ることができません。
工場は事務室とは、別の世界ですから。
そんな中でセミナーに参加していただきました。
参加した手ごたえはいかがでしたか。
要点はつかめましたか。
谷口
セミナーは伊藤先生がかなり迫力のある方でした。
1部の方はかなり範囲が広く、工場はこういう目標を持ち、ノルマを抱えているということをかなり駆け足で教えていただきました。
これは全体像をつかむために非常に良かったと記憶しています。
それと、工場にとって大事な部分についてかなり語気を強めて話してくれました。
セミナーのテキストは絞り込んだ内容になっていましたが、それをパワーポイントで説明してくれ、要点がさらに整理できました。
私はセミナーに行く前、工場のノルマを理解したいと思っていたのですが、そこは本当によく分かりました。
私がセミナーで感銘を受けた点は、先生が育成をすごく大事に考えていたことです。
第2部で人材育成や研修についてそれまで以上に熱く語ってくれました。
もともと私は調達の仕事に長く従事してきました。
しかし、人材育成や研修は経験がなく実際に講師をするようになってから、これらについて考えるようになりました。
まだここ3、4年の話なのです。
でも、よくよく考えていくと、工場は正確にものづくりをする場所です。
だから、さまざまなノウハウや知識を次の世代に継承していかなければなりません。
この点では、どの工場も昔から苦労していたことが分かりました。
確かに、安全面などをきちんと教えないと、事故が起きてしまいますものね。
それで、人材育成や研修の基本は工場のものであっても、事務系の職場や私どものような電気設備を運用するサービス業でも十分に応用が利くと感じました。
ヒントは現場にありということですか。
谷口
おっしゃる通りです。
技能を重視する環境、人材育成の大事さをいい続ける環境にして、リーダーを育てていかなければなりません。
人材育成を進めるためには、人事の方針にそのことをきちんと盛り込む必要があります。
それと技能を継承していくには、小集団の活動も重要です。
事務系の仕事だとそういう部分が非常に軽視され、それがために育成や研修が進んでいないことも第2部の中で聞きました。
日本能率協会のようなところだと、ペアでOJT的に仕事を教え、覚えていくものでしょうが、弊社ですと人事ローテーションによって職場は2、3年で異動します。
しかも、事務系になるとどんな仕事でもできるだろうという感じになっています。
マニュアルはきちんと作りましたが、やはり2、3年で異動するため、どうしても浅掘りというか、表面だけで仕事を覚えた気になることがあります。
こなすだけになっているのですね。
谷口
そう、こなすだけのノウハウ継承になっています。
今はようやくCPPなどを活用し、きちんとノウハウ継承しようという方向になってきましたが、それでもまだ問題意識は深くありません。
そう痛感させられたのも第2部の話からです。
頭をガツンとやられた感じです。
確かに第2部で書かれていることを守らないと事故が起きる可能性があります。
谷口 品質も落ちますよね。
QCDSEが崩れてしまいますからね。
谷口
だから、工場の人たちは余計に気を使っているのでしょう。
私のような事務系はその辺りが弱いです。
技術はちゃんと手にくっつけないと、良い品質のものが生産できません。
ところが、事務系は通り一遍で、紙の上でできていればもうできたような誤解をするところがあります。
その辺のことを紐解いて確認していないことが、痛いほど分かりました。
谷口
私が調達部門で研修を始めたところ、他の部署が専門教育で悩んでいると、われわれ調達部門が研修を始めたと聞いた役員が、私のところへ話を聞きに行くように言っていたそうです。
この間も経理部門の人が話を聞きに来ました。
一応、CPPを土台に専門教育を進めていることを説明しましたが、そもそも論として研修や人材育成をどういう考え方の上に立ってやるべきかというところに話が行ってしまいます。
その場合は、CPFの教科書、セミナーのテキストを読むと、研修や人材育成に対する態度や、事務局がどう教えたらいいのかがよく分かります。
だから、今は他の部署から話が来ると、CPFの教科書、セミナーのテキスト貸し出しをしています。
最近でもeラーニングをどういうときに使うべきかという質問をされました。
CPFセミナーのテキストを読み込んでいけば、本当に伝えなければならないことをeラーニングなんかでは伝えられないことがひしひしと分かります。
やはり、手をかけて人から人へ伝えていくべきものなのでしょう。
動画の方が伝えやすい部分も一部にあるでしょうが、教わる側の熱意やモチベーションを刺激して必死にさせるには、eラーニングでは効果がありません。
教育や人材育成に必要なことがテキストに書かれているわけですね。
谷口
第2部にそういう部分が書かれています。
それに、これぐらいコンパクトにいろいろなことを書いてある本はあまりありません。
どちらかというと、人材育成や研修の本は理論だけで、具体例が入っていないことが多いのです。
それに比べ、このテキストは工場で教えなければならないから、具体例がたくさん入っています。
単に通り一遍の理論ではなく、前半の第1部からつながって具体的にどうするかを示しています。
経理の人も結構、参考になったそうです。
経理の方がCPFの教科書やセミナーのテキストを読んだというのは、初めて聞きました。
私たちが気づかない価値があったのですね。
谷口
多分、あるのだと思います。
日本能率協会にも研修や人材育成の考え方を教える講座があるかもしれませんが、人事や研修の担当者が概念の話をするのと、CPFのように工場の具体例で語る内容は、ちょっと違うように思います。
具体例があると手が届きやすく、他の部署でも参考にしやすいのではないでしょうか。
すごくいい気づきをしていただきました。
ありがとうございます。
谷口 他の部署から、いろいろと相談を受けた際、いつも「CPFのセミナーと教科書は良い。参考にしてね。」といっています。
CPFの学習についてもう少しうかがいたいのですが、テキストをお求めになってから受験するまでに勉強時間をどれくらい取りましたか。
谷口 セミナーは確か、受験の1カ月前でしたよね。
1カ月前です。
谷口
セミナーに申し込んだのが、セミナーの1カ月前ぐらいでした。
多分、その1、2カ月前に通勤時間などでテキストを読み、独学だと厳しいと感じたように記憶しています。
セミナーに申し込んでから薄く勉強し、本格的にスパートしたのはセミナーのあとでした。
それではトータルで3カ月ぐらいですか。
谷口
それくらいです。
3カ月のうち、最初の2カ月はどんなことを書いてあるのか見ていく程度で、暗記するところまで行きませんでした。
セミナーを受けてから本格的に暗記を始めた感じです。
勉強する中で何か工夫されたことはありましたか。
ノートにまとめるのもテクニックの1つだと思いますが、何か工夫したことがあれば教えてください。
谷口
1つはノートに復習のポイントを糊付けしたことです。
復習のポイントをセミナーのテキストからコピーして貼り付けました。
これに対する回答をテキストなどから拾い、書き込んできちんと覚えていこうと考えたのです。
勉強した日付を入れ、同じことを何回も繰り返しました。
最初に分からなかったところは黄色を入れていきます。
できたら色を変えて記録を取っていきます。
そうすると、これだけ回数を重ねたのだから、途中で投げ出さずに頑張って勉強しようという気がしてきます。
そうやって自分の勉強をマネジメントしていたのですね。
谷口
そうです。
あとは人がたくさんいるところでやると、勉強が進みます。
CPPのときはファミリーレストランで学習されたと聞きました。
谷口
孤独に勉強していると煮詰まってしまうので、ファミレスやマクドナルドなどたくさんの人がいるところで勉強しました。
中には一生懸命にノートを覚えている人もいます。学生や浪人生も多いですが、以外にも会社員も多いのです。
そういう同じような苦労をしている人がいるところで覚えるのがいいと思いました。
図書館でもいいのですが、ちょっと静かすぎる気がします。
試験を受けて合格された感想をうかがいたいのですが、伝えたいことはありますか。
谷口
人材育成や研修に興味があるなら、このセミナーを受けると、目から鱗が落ちる気がすると思います。
QCDSEがかなり広範囲になりますから、絞り切れないと感じた人はセミナーを受けるべきでしょう。
セミナーは1日で、かなり時間的にタイトです。
すごい勢いで進んでいきます。
だから、受講後にちょっと心配になるかもしれませんが、ちゃんとセミナーで出た内容をやれば受かると確信して勉強を進めてほしいと思います。
学んだ内容は実際に工場へ行った際、話す内容ですから、もしも勉強中に工場へ出向く機会があれば、学んだことをインプット、アウトプットする好機になります。
工場で使えば、相手との話が弾みますし、自分の理解も深まります。
反復して学習すれば必ず覚えることができます。
それでは合格したときの感想をお願いします。
谷口
自分にとって専門外の内容ですから、覚えなければいけないことが多く、途中で何度かくじけそうになりました。
仕事が忙しくなり、復習ノートに触れられないことも一時期ありました。
自分なりに苦労をしましたので、合格したときは本当にうれしかったです。
そのときにこれで工場に出かけた際に自信をもって話ができると思いました。
工場からすると、発注先の人間が来て「ああしろ、こうしろ」と指示するわけです。
腹の中では「お前何にも分かっていないくせに偉そうに」と考えているはずです。
CPFを勉強していれば、私は工場のことをちゃんと勉強しているから、工場側が悩んだら相談に乗れることを伝えられます。
そんなことが合格した瞬間に頭に浮かび、ほっとしました。
自信を持ってサプライヤーと話し、活動ができるようになったわけですね
谷口 はい、工場で共同改善をするにしても、それまでは聞きかじりの知識で対応せざるを得ませんでした。 工場で一般的でなおかつ普遍的な知識を身に着けることができ、自信につながっています。
CPPのときは受験のお仲間と合格の喜びを分かち合ったという話を覚えていますが、今回はどうでしたか。
谷口
今回はトライアル的に受けたものですから、他人を巻き込むのはちょっと難しかったです。
1人で勉強を続けざるを得ませんでした。
専門外ということもあり、今回の方が勉強はきつかったです。
社内で何かを共有することはありましたか。
谷口
受かったことは伝えました。
実際に勉強している途中で工場へ出かけたことがありましたが、「谷口さんが話す内容が変わった」といわれました。
それはサプライヤーからでしょうか。
谷口
いえ、同行した社員からです。
同行した人には私が知識を身に着けていることが分かったみたいです。
合格後には、CPFの知識を工場で話をする際に生かせるようになり、物事がスムーズに進むようにもなりました。
これまでは向こうも気遣ってくれたのか、コストや原価の話ばかりでしたが、今は工程や作業改善、環境負荷対策、小集団活動、QC活動など幅広いテーマで話をしています。
「谷口さん、なんでそんなことを知ってるの?」とびっくりされることもあります。
私が工場勤務の経験を持っていないことを知っていますから、工場の人たちはいぶかりますが、そんなときはCPFの勉強をしたことを伝え、工場でも勉強した方が良いと強調しています。
だから、本当にうれしかったのは工場の人が「よく知っていますね」といってくれたことです。
その話題をきっかけに話が弾み、工場へ有益な情報も伝えられます。
日本人の仕事は結構、ギブアンドテイクの貸し借りみたいなところがあり、良い情報を得たら助けてあげようという部分があるでしょう。
この間も小集団活動のリーダーシップで悩みを打ち明けられたので、テキストの第2部に書いてあった話を少しお伝えしたところです。
そういうところは多くの工場に共通した悩みですが、風土改革や工場長の音頭取りなどさまざまなノウハウを話しました。
そんな悩みを1人で抱え込んでいることが往々にしてありますが、共通の悩みとしていっしょに考えていると、私が頼んでいる仕事に積極的に関与してくれるようになりました。
おかげで私も仕事がやりやすくなっています。
サプライヤーとの距離がより近くなった印象を受けます。
谷口
そんな感じです。
工場の方でも「ちょっと受けてみようかな」という人はいました。
意外と知名度がなく、みなさん、知らないのです。
うまく伝えていけば、もっと受ける人が増えるのではないでしょうか。
受験して良かったことや活用方法についてお話しいただきましたが、この資格をどういう人に広めていけばいいとお考えになりますか。
谷口
私はバイヤーで調達部門にいますが、調達部門で工場と共同改善活動を進めたいと考えている人にぴったりだと思います。
これを勉強することで工場との関係がとてもスムーズになるからです。
もう1つは私と同じようにバイヤーで研修や育成を担当する人です。
研修の講師をする場合、どうしても工場の仕事について知っておかないといけません。
良い企画も立案できないでしょう。
第2部の教育や育成、リーダーシップの部分は、どういうふうに研修すべきかがよく分かる内容です。
非常にためになります。
こういう部分では、メーカーの方が昔からノウハウの継承に苦労してきただけに、先達といえます。
私どもが今、苦労していることを前もって体験していますから、克服するためのノウハウを持っています。
調達部門は事務系の一般管理部門扱いにしている会社が多く、事務系は研修面が弱いものです。
なかなか人が育たず、どの会社も苦労しているようです。
しかし、工場の研修制度や人材育成方針から学べる点は多々あります。
研修の事務局をしている人はぜひ、この資格を取得して勉強すべきでないでしょうか。
それと、資格を取得した人たちが事務局になり、調達部門の人が勉強していけば、国内で共同改善がどんどん進んでいくでしょう。
バイヤーが現場を知り、共同改善を進めるために、必要な資格だと思います。
バイヤーは得てして値下げの要請ばかりを取引先にしがちですが、買う側もどうやって原価改善するかのアイデアを出さないと取引先の利益を削るだけになりかねません。
単に値下げ要請するのではなく、お互いにアイデアを出し合い、勉強していくことが必要なのです。
最近は働き方改革が叫ばれていますが、お互いの生産性を高めるということでも意味があると思います。
ただ、ちょっと残念なのは、CPPが既に調達部門のスタンダードになりつつあるのに対し、CPFの名前がなかなかヒットしないことです。
CPEはトヨタ自動車がスタンダードとして推奨しているようですが、CPFはこれから知名度を上げる努力を重ねなければならないでしょう。
それでも、CPFは管理の基礎を学びたい人にとっても、非常に使える内容です。
本当に使える資格だと考えています。
CPFは製造業に限らず、様々な現場に必要なエッセンスが詰まっていますよね。
谷口
詰まっています。
CPFの第1部の方は、現場の品質を高め、QCDSEを上げるという意味では普遍的だと感じます。
たとえばCPPは、もともとは、製造業の特に組立て産業関係を対象に立ち上げられた資格制度ですが、ゼネコンの人がどんどん受けるようになるなど、いろいろな業種の人が使っていますよね。
だから、次のCPFテキスト改訂の機会があれば現場をもっと広く捉えていただけたら、より普遍的な内容に仕上がるのではないでしょうか。
建設、介護、病院などいろいろな現場がありますね。
谷口
そういった現場でも使えそうに思えます。
どんな仕事であっても、QCDSEは登場するでしょうし、リーダーシップや部下の育成は必要です。
ぜひCPFの資格をCPPやCPEと同じくらい宣伝していただき、合格者を増やしてください。
そうするとこの資格の地位が上がっていきます。
資格の価値を高めるのも、合格する仲間を増やすのも、私どもの使命ですね。
最後に何かひと言あれば頂戴したいと思います。
谷口
人材育成や研修は会社が環境を整えるなどいろいろなことをやっていかないと、しっかりしたものにならないです。
最近の研修はeラーニングで簡単に済ますケースが増えてきましたが、そこに手をかけないと伝わるものが少ないでしょう。
事務局が楽になるだけで、実は、教わる現場は本質を習得していないという現象が増えています。
本当に伝えたいことは、人が面と向かって「これが大事でその理由はこうだから」と噛んで含めて教えていくべきものです。
これが大事だと思ったのが、今回の最大の気づきです。
CPP、CPF2つの資格を取っていないと分からない言葉だと思います。
CPF、第一線監督者というネーミングに少し課題があることを気づかせていただきましたし、現場にすべてのヒントと答えがあることも再認識させていただきました。
現場の強さが日本のものづくり、製造業を支えてきたわけですが、忘れかけている部分もあるようです。
どうもありがとうございました。